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芥川龍之介の「王朝物」といわれる、平安時代に材料を得た歴史小説のひとつ『好色』をお届けします。
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大正10年10月『改造』に発表。
出典は『今昔物語』
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手に入らないものほど、余計に美しく高嶺の花に思うのか。
平中は余程のいい男だったに違いない。何せ彼が文をつけた女は、大抵は三度目には靡いてしまったのだから。
そんな中、侍従だけは二十通書いても落ちない。落ちないどころか、文の返事もツンツンしていて、というか、莫迦にしていて小憎らしい。
余計に気になる存在なのだ。
いよいよ、という時の平中がまた、可笑しくも可愛らしい。
運なぞというのは、皮肉に出来ているものだから、と、侍従とは関係の無い雨の事を考える。
「春雨、五月雨、夕立、秋雨、…秋雨と云う言葉があるかしら?秋の雨、冬の雨、雨だれ、雨漏り、雨傘、雨乞い、雨竜、雨蛙、雨革、雨宿り…」
こんな時にこんなにも雨のつく言葉をよくも思い浮かべられるものだ。
何とも滑稽でいじらしい。
「好色」というタイトルから、まさかの艶っぽい声を出さなくてはいけないのかしらん?と思ったのは余計なことで、侍従のセリフは
たった一行でした。
しかしまぁ、最後の「まりも美しとなげく男」には、ただ驚きでした。
いやぁ、まいった龍之介殿‼️
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