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【竜】
芥川龍之介
1919年(大正8年) 27歳の頃の作品。
声に出して読むと、情景が浮かび涙が出てきます。
どうぞ、ごゆっくりとイメージしながらお聴きくだされば、幸甚に存じます❤︎
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それでも今日と云う今日を待ち兼ねていた見物は、奈良の町は申すに及ばず、河内、和泉、摂津、播磨、山城、近江、丹波の国々からも押し寄せて参ったのでございましょう。
石段の上に立って眺めますと、見渡す限り西も東も一面の人の海で、それがまた末はほのぼのと霞をかけた二条の大路のはてのはてまで、ありとあらゆる烏帽子の波をざわめかせて居るのでございます。
と思うとそのところどころには、青糸毛だの、赤糸毛だの、あるいはまた栴檀庇だのの数寄を凝らした牛車が、のっしりとあたりの人波を抑えて、屋形に打った金銀の金具を折からうららかな春の日ざしに、眩ゆくきらめかせて居りました。
そのほか、日傘をかざすもの、平張を空に張り渡すもの、あるいはまた仰々しく桟敷を路に連ねるもの--まるで目の下の池のまわりは時ならない加茂の祭でも渡りそうな景色でございます。
これを見た恵印法師はまさかあの建札を立てたばかりで、これほどの大騒ぎが始まろうとは夢にも思わずに居りましたから、さも呆れ返ったように叔母の尼の方をふり向きますと、、、
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「竜」というタイトルに惹かれて読んだ。
黙読すると勿体無いので、いきなり音読した。
芥川龍之介の「王朝物」といわれる、平安時代に材料を得た歴史小説。
私は、この時代が好きな為か
よく分からないが、音読すると妙に情景が浮かんできて、涙が溢れる。
「竜」の中では、
『3月3日この池より竜昇らんずるなり』という建札につられた見物の人波が、四方の国々から押し寄せ、二条の大路のはてのはてまで、ありとあらゆる烏帽子の波をざわめかせて居るのでございます。
というくだりが、感動して泣けてくるのだ‼️
そして、この物語は
私流に解釈するならば、軽く意図した恵印の悪戯は、空に放たれた途端、多くの人々の願望と一致し瞬時にして現実化したのではないか…と。
ちょいと「あとがき」っぽくしてみました(#^.^#)
朗読:青空永音
お読みいただき有難うございました❤︎
【本の紹介】